ハヤテのごとく! 第333話 「特別な何か」

 
 
 
最近はやたらと遅くなってるんですが、色々とすいません。
 
 
 
 
ヒナギクさんの指示を受けてルカが描いた新たな作品。
ハヤテはそれを面白い、と思った。
それも今までとは全然違う、と。
 
 
ハヤテは以前にもルカを知らない段階で「面白い作品」だと評価したが、今回のはそういう意味合いではなく、知人という部分を差し引いても面白いという意味だろう。
 
 
 
面白くするためにヒナギクさんがしたのは単純に抜けている基礎を固めることだった。
作中の表記を用いれば
 
 
80点を90点にするのは難しい。
90点を95点にするのはさらに難しく、
95点を98点にするのは至難の技。
 
だが20点を50点にするのは簡単だ

 
 
そういう事らしい。
 
 
そしてルカの作品に抜けていた基礎とは「誰でも読める」という事。
ヒナギクさんがルカを補強したのは全て、評価されるためには読んでもらえるような作品でないとダメだ、というその一点に向けての事。
 
 
 
読む事ができれば面白いかどうかが判断できる。
 
この一点は通常の漫画においても通じるが、同人誌という観点からすればより深い意味を持って来る。
イベント会場で直接、購入する場合は見本誌が一冊丸ごと置いてあるが、同人ショップでの委託販売では見本が数ページだけあり、その部分で内容を判断しなければならない。
その部分が面白くなければ購入は見送られるし、極端な言い方をすれば見本の部分さえ面白ければ購入に繋がる。
 
そして見本が読めるレベルかどうかはその全てを左右する。
イベント会場では見本誌をじっくり吟味する人もいれば、流し見で内容を判断する人もいるだろう。
 
それにはまず、面白いかどうかチェックしてみよう、という気にさせるだけのクオリティである事は何よりも重要だ。
 
 
 
そしてヒナギクさんが目指したもう一つは30部の完売。
来場者から計算してだいたい確保できそうなラインとしてヒナギクさんが出した人数は30人。
そのくらいなら買ってくれるはずだと。
 
そして完売はルカに自信を与えて成長を促す。
 
 
それがヒナギクさんの考えだった。
やっぱり頭が切れるだけあってよく考えてるな。
加えてルカは自分のレベルアップのためならば素直に受け入れる柔軟な姿勢を見せている。
 
 
ヒナギクさんくらい的確なアドバイザーがナギにもいれば話は変わってきたのだろうか…………
 
ああ、そうか。西沢さんしかいないんだったな
 
 
 
 
そのナギが立ち上げた同人誌の宣伝サイトを見て千桜さんとナギは意見が完全に割れる。
 
売るのが目的だ、とナギが言えば
数ではなく問題は中身だ、と千桜さんが反論。
 
話題性で数を稼ごうとしている、という千桜さんの指摘に対し、
世の中、一番大事なのはどれだけ売れたかだ、と真っ向から意見するナギ。
 
そして、こんなやり方は普通じゃない、と言われたナギは感情を爆発させる。
 
 
 
普通の能力で普通のやり方をして、普通に頑張って普通の結果に仲間同士「よかったね」と満足する生き方なんてしたくない!!
 
私は……特別な何かになりたいのだ!!!!
 
 
 
ナギの脳裏に焼き付いていたのはコンサート会場でのルカ。
自分とは違う特別な存在に映った彼女に対し、ナギが何を感じたのかは正確な所は分からない。
 
 
けれど最近まで自分は選ばれた人間だと思い込んできたナギにとって、普通の自分、というのはやはり受け入れられなかったのかも知れない。
だから特別な存在=売れる同人誌の作者、という位置を望んだ。
 
それは分かる。
 
 
けれど、ナギに問いたい。
普通である事がそんなにも悪いのかと。
そもそも普通であるという事が難しいと知っているのかと。
 
ナギは遺産の継承権を失って屋敷を出る時、それまで普通だと思っていたものがあっけなく消える事を学んだと思っていたのだが違ったのだろうか?
 
 
特別な何か、になるための方法として、ただ数だけ追い求めるというのは間違っている気がするのだが、不幸な事にそれを指摘する人間は千桜さん以外にいなかった。
千桜さんがもう少し理詰めで論破すれば話は違ってきたのかも知れないが、もう遅い。
 
ここまで来ると手痛く失敗し、そこから学ぶしかないだろう。
ナギに不足しているのは徹底的な挫折。
 
自身の作品レベルの低さは理解したものの、それはまだ決定的な挫折とは言い難い。
ナギがこれで正しいと思ったやり方で自信を粉々に打ち砕かれるまで行った所で初めて挫折を味わったと見るべきではなかろうか。
 
 
ナギの姿を見て思い出すのはPCゲーム『こみっくパーティー』における詠美の姿。
彼女も個別ルート終盤において焦りからくる無分別な行動で手痛いしっぺ返しを喰らったが、今のナギの姿はそれに似ている気がする。
 
 
 
何だかナギに関しては凄まじく雲行きが怪しくなって来たハヤテ。
 
いよいよ即売会が幕を開ける。
 
ナギの同人誌は売れるのか。
ルカの同人誌は完売するのか。
 
 
すぐに結果が出たりはしないだろうが、そうそう引き延ばせる部分でもないはずなので近いうちに答えが出るだろう。
 
ルカ編の山場の一つを迎えたハヤテから今後も目が離せません