鶴屋さん関連記述まとめ

 
 
 
 
5、6月頃にようやく続きが出るらしき涼宮ハルヒシリーズ。
副管理人は
ハルヒを出すくらいならラグナロクを出せよ
と常日頃から主張しているわけだが、今回はさておいてハルヒである。
 
念の為に言っておくと副管理人は原作派です。
でもって鶴屋さん派です。
 
 
その鶴屋さんに関して思う事がある。
 
「ネタキャラとして扱われてないか?」
 
という事である。
 
 
 
無論、副管理人個人の抱いている印象かも知れないのだが、どうにもアニメ版ライブアライブでの言動がピックアップされてからネタキャラとして扱われている気がしてならない。
 
 
鶴屋さんどんなキャラかという推測する上で必要不可欠なエピソードがアニメ化されていなかったりするのもそういう風潮を生んでいる要因の一つではあるだろうが、とにもかくにも好きなキャラが間違ったイメージ(副管理人の独断と偏見)で見られるのには納得が行かない。
 
というわけで、今回は原作から鶴屋さんに関連する記述を抜粋してみた。
注意事項を以下に。
 
 
 
※刊行順です
 
※「涼宮ハルヒの憤慨」が手元に見当たらなかったので、その巻の分は抽出できていません。あらかじめご了承ください
 
※可能な限り、抜粋しましたが、数箇所、拾ってない部分があります
 
※アニメ派の方へ。アニメ化されていない箇所も抜粋しているのでネタバレもあります。アニメを楽しみにしている人は回れ右を推奨します
 
※表記は原作準拠です。改行も原作通りなので若干、読みにくい部分があります。ご了承ください
 
 
 

 
 
 
 

  
涼宮ハルヒの溜息
  
 

涼宮ハルヒの溜息 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの溜息 (角川スニーカー文庫)

 
 
 
キョンくんっ。みくるどうしたのっ?」
元気よくおっしゃるその女性は、鶴屋さんと言って、朝比奈さんのクラスメイトだ。朝比奈さん曰く「この時代で出来たお友達」だそうだから、この人に変なプロフはないと思う。六月頃にハルヒが「草野球大会に出る」と言い出したときの助っ人として朝比奈さんが連れてきた一般的な高校二年生女子である
(155ページ)
 
 
 
鶴屋さんは健康的な白い歯を惜しげもなく見せつけながら、
「それでさっ、何やんの? 暇なら来てって言われたから来たけどさー。涼宮さんの腕に付いてる腕章は何て読むのあれ? そのハンディビデオをどうするの? 有希ちゃんのあの恰好なに?」
矢継ぎ早に質問を浴びせてくる。俺が答えようと唇を開きかけた時には、鶴屋さんは古泉の前に移動しており、
「わお、一樹くんっ! 今日もいい男だねっ」
せわしない人だった。
しかし、その鶴屋さんと元気さではハルヒだってタメを張れる
(156ページ)
 
 
 
谷口と国木田がニッケル合金なんだとしたら鶴屋さんはプラチナだ。ロケット花火とアポロ11号くらいの違いは余裕であるね
(162ページ)
 
 
 
鶴屋さんのテンションも高かったが、ライトなマイルドハイテンションだ。ハルヒイカレたナチュラルハイとは一線を画していると言ってもいいだろう。まだしも鶴屋さんは常識世界の範疇に属していると言える
(162ページ)
 
 
 
鶴屋さんは朝比奈さんの肩をぼこぼこと叩いて咳き込ませ、
「これなに? レースクイーン? 何かのキャラ? あ、そうだっ。文化祭の焼きそば喫茶、これでやりなよっ! すんげー客くるよっ!」
朝比奈さんのヒキコモリ化もよく解るね。つるべ打ちを喰らうのが目に見えているのにマウンドに立ちたがるピッチャーはいない
(163ページ)
 
 
 
すかさず鶴屋さんが堪えていた笑い声を盛大に上げてケラケラと、
「これ何映画? ってゆうか映画なのっ? わはは、むっちゃ面白いよ!」
面白がっているのはあなた以外ではハルヒくらいみたいですけどね
(170ページ)
 
 
 
鶴屋さんが俺の手元を興味深そうに覗き込んできた。
「ふうん。最近のビデオってこんなん? これにみくるのコッパな画像がいっぱいなの? 後で観せてくんないっ? 爆笑できそうだねっ」
笑いごっちゃない。以前のバニーでビラ配りは一日だけで済んだが、このバカ映画撮影は最悪、文化祭前日あたりまで続く恐れがあるのだ。撮影拒否がそのうち登校拒否に発展するかもしれん。そうなったら困るのは俺だ。美味しいお茶が飲めなくなるからな
(170ページ)
 
 
 
俺は離れたところにかたまっている第二集団を眺めた。ハルヒと脇役デコボコトリオは、ハンディの映像を見て何やら嬌声を上げている……のは鶴屋さんだけか
(176ページ)
 
 
 
集団の先陣を切って歩くハルヒ鶴屋さんは、いつの間に意気投合したのか馬鹿デカい声でブライアン・アダムスの『18 till I die』のサビだけをリフレインして唄っていた。後を歩いている者として、一応の知り合いとして非常に恥ずかしい
(188ページ)
 
 
 
「はーい、到着っ。これ、あたしん家」
声を張り上げて鶴屋さんが一軒の家の前で立ち止まった。声も大きな人だったが自宅もデカかった。いや、たぶんデカいんだと思う。なぜなら門から家が見えないので判断できん。しかしそれこそまさに判断材料だ。門から見て取れないほど遠くに家屋があるということは、そこまで相当な距離があるということで、ついでに左右を見回してみるとどこの武家屋敷かと思うほどの塀が遠近法に従って延々と続いていた。どんな悪いことをすればこんな余分な土地を持つ家に住めるのだろう
(188ページ)
 
 
 
三角ベースボールが出来そうなスペースを縦断して、やっと玄関まで辿り着いた。鶴屋さんは朝比奈さんを風呂場まで連れて行ってから、俺たちを自室に招き入れた。
何だね、自宅の俺の部屋が猫用の寝室に思えるね。だだっ広い和室に通されて、どこに座っていいものか悩むくらいだ。だが、悩んでいるのはどうやら俺一人で、ハルヒをはじめとする長門と古泉も何も恐れ入ることはないようだった
(189ページ)
 
 
 
鶴屋さんの部屋は卓袱台しかない簡素な畳敷き和室だった。
俺は隣りに座る長門の真似をして正座していたが、三分と保たずに足を崩させてもらう。ハルヒは最初から胡坐をかいて、鶴屋さんに何やら耳打ちしていた。
「くふっ! あ、それ面白いねっ! ちょっと待ってて!」
鶴屋さんは朗らかかつ高らかに笑い声を上げると、そっから部屋を出て行った。
俺は考える。鶴屋さんは一般人で正しいんだろうな。こうまでハルヒと仲良しさんになれるのは常軌を逸した人間か人間以外の何かだと相場が決まっているのだが、どこかに波長の共通するものがあるのかもしれない
(190ページ)
 
 
 
 

 
涼宮ハルヒの暴走
 
 

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)

 
 
 
せめてもう一人くらい俺の精神疲労を共有するような人間がいてもいいんじゃないだろうか。だいたい俺だってそうそう律儀にツッコミ入れる性癖を持ってないんだぞ。そんな気にならん時だってある。俺だけがこんな責務を負わされるのは不公平だと恨み節の一つでも唄いたいところだが、かと言って谷口や国木田を巻き込んでやろうとも思わない。気の毒だからではなく、能力的な問題さ。あの二人にハルヒと対抗できるだけのボキャブラリーと反射神経があるとは思えないし、そういやあいつらと鶴屋さんもどっかボケてるよな。くそったれめ。この世は狂ったもん勝ちか
(96ページ)
 
 
 
ハルヒがデタラメな順番で投入する肉や魚や野菜類を、布巾をかぶったメイドバージョンの朝比奈さんが菜箸でより分けたりこまめにアクをすくったりしている傍らで、ただ喰っているだけの俺と長門と古泉のSOS団五人組に加え、今日はスペシャルゲストを招いていた。
「うわっ、めちゃウマいっ。何これっ? はぐはぐ……ひょっとしてハルにゃん天才料理人? ぱくぱく……うひょー。ダシがいいよ、ダシがっ。がつがつ」
鶴屋さんである。この元気な声の主は黙々と食い続ける長門と張り合うように、いちいち雄叫びを上げながら箸を高速移動させて鍋の中身を自分の取り皿に運び込み、
「やっぱ冬は鍋だねっ! さっきのキョンくんトナカイ芸も大笑いだったし、いやーっ今日は楽しいなあっ」
ウケてくれたのはあなただけでしたよ鶴屋さん
(189ページ)
 
 
 
「ウチの別荘の中じゃ一番こぢんまりしてるんだけどねっ」と鶴屋さん。「でも気に入ってんだっ。これくらいのが一番居心地いいのさ」
駅からそんなに離れておらず、近くのスキー場には歩いて行ける距離にあるという立地条件だけでも結構な値段になりそうだし、おまけに鶴屋さんはこぢんまりなどと本気で言ってるらしいが、それは彼女の自宅である日本家屋と比べてのこぢんまり具合なので一般的な感性を代表して言わせてもらえば、夏に訪れた孤島の別荘と遜色ないデカさだった。いったい鶴屋家はどんな悪いことをしてここまで羽振りのいい建物を建てることができたのだろう
(210ページ)
 
 
 
先導してくれるのは荒川執事氏である。彼と森さんの二人は、鶴屋さんから許可と鍵を得て俺たちに先行すること一日、昨日にはここに到着し準備を整えてくれていたのだという。古泉の周到な根回しによるところ大であり、細かいことを気にしない鶴屋さんと鶴屋家の人々のおおらかな性格もなんとなくうかがえる話だった
(211ページ)
 
 
 
ハルヒの号令に従って俺たちは着いたそうそうに階下へ集合することになった。
「さあ、行くわよ、スキーしに!」
さっそくすぎる気もしたが、ハルヒ的ラストスパート兼スパークのために無駄に使える時間は一秒たりともないのだ。おまけに根っから元気なのは鶴屋さんもであり、ひょっとしたらハルヒ以上にハイな彼女との相乗効果で行動力までダブルになっている気もするね
(214ページ)
 
 
 
リフトで登っていく色とりどりのスポーツウェアがポツリポツリと目に入る。思っていたより人は少ないなと思っていると鶴屋解説が入った。
「割と穴場なとこなんだよっ。知る人ぞ知る静かなスキー場さ。だってここ、十年前まであたしんとこのプライベートゲレンデだったからねっ」
今は開放してるけど、と補足する鶴屋さんの言葉にはまるで嫌みなところがない。世の中にはこういう人も実際にいるのである。見栄えもよければ性格も金回りも家柄もいいという、もうどうしようもないようなお人がね
(216ページ)
 
 
 
しばらく黙って歩を刻んでいると、鶴屋さんは爽やかにケラリと笑い、俺の耳元に口を寄せできた。
「ねえキョンくんっ、話は変わるけどさっ」
なんすか、先輩。
「みくると長門ちゃんが普通とはちょっと違うなぁってことくらい、あたしにも見てりゃ解るよ。もちろんハルにゃんも普通の人じゃないよねっ」
俺はマジマジと鶴屋さんを観察し、その明るい顔に純粋な明るさのみを見いだしてから、
「気づいてたんですか?」
「とっくとっく。何やってる人なのかまでは知んないけどね! でも裏で変なことしてんでしょっ? あ、みくるには内緒ね。あの娘、自分では一般人のつもりだからっ!」
よほど俺のリアクション顔が面白かったのだろう、鶴屋さんは腹を押さえるようにしてケラケラと笑い声を上げた。
「うんっ。でもキョンくんは普通だね。あたしと同じ匂いがするっさ」
そして俺の顔を覗き込んで、
「まーねっ。みくるが何者かだなんて訊いたりしないよっ。きっと答えづらいことだろうしねっ。何だっていいよ、友達だし!」
……ハルヒ、もう準団員でも名誉顧問でもない。鶴屋さんも正式にスカウトしろ。もしかしたらこの人は俺より物わかりのいい的確な一般人を演じてくれるかもしれないぞ。
鶴屋さんはサバサバとした動作で俺の肩をはたき、
「みくるをよろしくっぽ。あの娘があたしに言えないことで困っているようだったら助けてやってよっ」
それは……、……もちろんですが。
「でもさぁ」
鶴屋さんは目をキラキラさせて、
「あん時の映画、文化祭のヤツだけどっ。ひょっとして、あれ、本当の話?」
聞こえていたのかどうか、古泉が肩をすくめる仕草をしたのが目の端に映った
(315ページ)
 
 
 
 

 
涼宮ハルヒの動揺
 

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

  
 
 
鉄板をこがす芳しい香り、入り口前に置かれた『焼きそば喫茶・どんぐり』という立て看板。そしてどの教室よりも長い蛇のごとき列。いや、それより真っ先に目と耳に飛び込んできたのは、
「やぁっ! キョンくんとその友達たちっ! こっちこっち、いらっしゃ〜いっ!」
十メートル離れていても聞き間違えることのない大声と晴れやかな笑顔だった。こんなに明るく笑える人間は、迷惑なことを思いついた思いついたハルヒを除けば俺の知り合いではただ一人である。
「三名様ご来店っ。まいどっ!」
鶴屋さんだった
(11ページ)
 
 
 
「どうだいっ。この衣装、めがっさ似合ってると思わないかなっ? どうにょろ?」
行列の横に身を乗り出した鶴屋さんは、俊敏に俺たちへと近寄ってきた。
「それはもう」
俺は意味もなく低姿勢になりながら鶴屋さんを見つめた。
うかつにも朝比奈ウェイトレスバージョンを妄想するのに忙しすぎて鶴屋さんも同じクラスだということを失念していた。谷口と国木田もカレイを釣ったと思っていたらその尻尾にヒラメが齧り付いて上がってきた釣り人のような顔になって、髪の長い上級生をマジマジと眺めている
(11ページ)
 
 
 
「盛況ですね」
と、言葉をかけると、
「わはははっ。入れ食いさっ」
鶴屋さんはスカートの裾をちょいとつまみ上げ、周囲の視線をはばかることない率直さ加減で、
「格安の材料で作った下手っぴ焼きそばなのに、こんだけ客集まるんだからもうボロもうけだよっ! 笑いが止まんないねっ」
本当に嬉しそうに笑う人だ。俺は行列に並んでいるのが男ばかりである理由を推理するまでもなく悟りきっていた。鶴屋さんの笑顔を見ていたら不思議と俺まで愉快な気分になってくるからな。世の中、騙されやすいのは決まって男の方である
(12ページ)
 
 
 
「そいじゃ、ちょろんと待ってて! すぐに順番回ってくるからねっ」
鶴屋さんはそう言って、ポケットの小銭をジャラジャラ鳴らしながら入り口の机に戻っていった。その後ろ姿が列の先頭に消えてから、
「元気だなあ。毎日あのテンションでよく疲れないよね」
国木田が感心したように声を上げ、谷口は声をひそめてこう言った。
キョン、前から思ってたんだが、あの人はいったい何者だ。お前と涼宮の仲間の一人でいいのか」
「いーや」
部外者だよ。お前たちと同じ、困ったときの人数合わせゲストだ。ちょっとその割には、妙に前に出てくるお人だけださ
(13ページ)
 
 
 
グッドデザイン賞を差し上げたいくらいのウェイトレス衣装を着込んだ朝比奈さんと鶴屋さんとが並んで立っていると、もはや壮観さもここに極まれりといった感じで、おそらくだが天国とはこういう風景があちこちにあるような場所を指すんだと思うね
(16ページ)
 
 
 
晦日の朝。森さんと荒川さんが作ってくれた朝食をたいらげた後、俺たちは鶴屋家別荘の一階に集合した。そこは吹き抜けになっている共有スペースである。まるで能か狂言をするために設えられた檜舞台じみた二十畳くらいのフローリングに、八人くらいは余裕で着ける大きな掘りゴタツが設置されている。ようは泊まり客が自由に集まってわいわいするための空間だ。当然床暖房付きで、壁の一角にある静音性にすぐれたファンヒーターも温風を吐き出してくれているから、共有スペースと通路を遮るようなものが何もなくとも暖かい
(188ページ)
 
 
 
「はじめまして多丸です。ご招待ありがとう。鶴屋家の別荘に招かれるとは光栄だな」
「いいって、いいって!」
鶴屋さんはかるーく言った。
「古泉くんの知り合いで、余興してくれるってんだから全然いいよっ。あたしはそんなんが大好きだ!」
どんな相手でも初対面から十五秒で仲良くなってしまえる鶴屋さんである。おそらく朝比奈さんのクラスでもこんな感じなのだろうな。その二年のクラスにいる男子がうらやましくなってくるじゃないか
(192ページ)
 
 
 
感心してやるべき達者なハルヒの絵心により、福笑いの似顔絵は各自の特徴をよく捉えていた。普通に目鼻を並べたら確かにデフォルメされた俺たちの顔が浮かび上がる。それだけに、ちょっと真剣にやらざるをえんな。
しかしこいつ、いつの間にこんなもんを作ったんだ。
「まず、誰からする?」
ハルヒの問いに、鶴屋さんだけが勢いよく手を挙げた
(201ページ)
 
 
 
タダ者でなさそうな鶴屋さんも透視能力はなかった。タオルで目隠しされた彼女は実に見事に笑える自画像を作り上げて、全員の爆笑を誘い、完成品を見て自分でも死ぬほど笑い転げた。笑い袋でもここまで笑わんだろうね
(201ページ)
 
 
 
俺の福笑いは大笑いな結果に終わった。まあいい。ここで無難なものを作って空気がしらけるほうが無粋ってやつだ。鶴屋さん、ちょっとあなた笑いすぎですが
(202ページ)
 
 
 
 

 
涼宮ハルヒの陰謀
 
 

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)

 
 
 
 
旅行から帰って来た次の日にまたどこかに行こうとするバイタリティにはほとほと感服するが、問題は俺を代表とする普通の人間の体内には永久機関など内蔵されていないということである。しかし、ハルヒと同レベルのエネルギー源をどこかに隠し持つらしい鶴屋さんは、
「ごめんよっ! あたしは明日からスイス行きさっ。おみやげ買ってくるから、頼むっ、賽銭箱にあたしのぶんの小銭をいれといてくれっかな!」
財布から出したジャラ銭を朝比奈さんに手渡し、続いて、
「これはお年玉だっ!」
妹にも硬貨を握らせ、
「じゃねーっ。また新学期にっ」
手を振りながら笑顔のまま駅前を後にした。感心するくらいにサバサバした歩き姿で、どうしたらあんな娘になるよう育てることができるのか、後学のためにも鶴屋さんのご両親に話をうかがいに行きたい
(9ページ)
 
 
 
何と言っても今までの知り合いを思い起こしてみると圧倒的に勘の鋭いのは女性陣のほうだった。ハルヒ鶴屋さんは少々鋭すぎるが
(128ページ)
 
 
 
外に出た俺を鶴屋さんがお見送りと称して追ってきて、こう言った。
「あれ、みくるのようでみくるじゃないね。っていうか、みくるじゃないようでみくるって感じかな? そうだね、今日学校で会ったみくるそのままじゃあないんだね?」
双子だと説明したはずっすよ、先輩
「あっはは。そうだね。そうしとこうか」
(146ページ)
 
 
 
揺れるひっつめ髪の後ろ姿を見ているうちに、どうしても訊きたく思った。
鶴屋さん
「なんだい?」
「あなたはどこまで知ってるんです? 朝比奈さんや長門――SOS団の連中がそこか普通じゃないって、あなたは言ってましたよね」
「まーねー」
ぴょんと小さく跳ねて、髪の長い上級生はくるっと振り返った。口全体で笑う笑顔は星明りだけでも充分に明るい。
キョンくん、よくは知らないよっ。なぁなーんか違うよねーってことくらいさっ。すっくなくともあたしとかキョンくんとか、普通に普通の人たちじゃあないないばーだよね」
そんだけ解ってりゃ充分だ。なのに、鶴屋さんは余計なことを訊いてきたことはないし、朝比奈さんが何者かなんてことを調べようともしていない
(147ページ)
 
 
 
「あたしはねっ、楽しそうにしてる人を見ているだけで楽しいのさっ。自分の作ったご飯を美味しそうにぱくぱく食べてくれる人とかさ、幸せそうにしている全然知らない人とかを眺めるのがあたしは好きなんだっ。うん、だからあたしはハルにゃんを見てるととっても幸せな気分になるよっ。だって、なんだか解んないけど、ものごっつい楽しそうじゃん!」
そこに混ざろうとは思わないんですか。見てるだけじゃ寂しくなんないですか?
「うーん、あたしはさ、映画とか観てすっげー面白いっとかよく思うけど、だからって映画作ろうとは思わないんだよね。観てるだけで充分なのさっ。ワールドシリーズスーパーボウルだって観戦するのはとても気分よく応援できっけど、うわーっあたしもアレやりたいっ! とか言って混じってプレイしようとは思わないんだよ。あの人たちはものげっついがんばってあっこにいるんだなぁって、そんだけで気持ちいいんだ。だいたいあたしには向いてないっさ! だったらあたしは自分にできる別のことをするよ!」
ある意味でハルヒとは対極の思想だな。あいつは面白そうなものには例外なく首を突っ込み、何が何でも自分でやっちまおうとするやつだから。
鶴屋さんは大きな目をくるくると動かしながら、
「それと同じっ。あたしはみくるもハルにゃんも有希っこも古泉くんもキョンくんも見てて面白いのさ! みんながなんかやってるのを眺めてるのが好き! そいでから、そんなみんなを横で見ている自分も好きなのさ!」
何のてらいもない笑顔と声だった。この人は本心から出る言葉を発している。そばにいるだけで何だか俺まで楽しくなってくるような空気がにじみ出ていた。
「だからあたしは自分の立場が気に入ってるのだっ。きっとハルにゃんも解ってんだと思うよ。あたしを強引に引っ張り込もうとしないもんね。全部で五人、その数がいっちゃんまとまってるっさ」
(148ページ)
 
 
 
鶴屋さんにはどう説明したのですか? 双子でしょうか。まさか本当のことをいったわけではありませんよね」
「どっちでもよさそうだったぜ」
「でしょうね。あの鶴屋さんのことですから」
当たり前のように言ってくれるじゃないか。いったい鶴屋さんとはどういう人なんだ。全部解っているようで、俺たちから微妙な距離を保っている、あの明るい先輩女子は。
「上のほうからのお達しで、鶴屋さんには手を出すな、と言われています」
古泉は若干真面目な形に唇を修正して、
「彼女はギリギリ無関係です。本来僕たちと交差することもなかったはずですが、何かの手違いで少し触れあってしまったのですよ。さすがは涼宮さん、といったところでしょうか」
どこからが手違いだ。朝比奈さんのクラスに鶴屋さんがいたことか。それとも草野球の助っ人としてやってきたあたりか。
「僕たちは彼女に干渉しない。その代わり、彼女も僕たちに必要以上の関わりを持たない。それが『機関』と鶴屋家の間で取り交わされたルールです」
途方もない裏話をそんなあっさりと言うなよな。
くく、と古泉は喉の奥で笑い、
「もっと言えば、鶴屋家は『機関』の間接的なスポンサー筋の一つに数えられます。ただし我々のことなどどうでもいいのか、やることなすことすべてに無関心を貫き通していますけどね。かえって助かりますからいいんですが、鶴屋さんはその鶴屋家の次代当主になる方ですよ」
鶴屋さん、あなた……。今まで俺たちはとんでもない人と親しげに口をきいていたようだ。心の底から知りたい。何者なんだ?
「ただの女子高生ですよ。僕たちと同じ県立校に通う、大きな家に住む高校二年生です。もしかしたら、僕たちの知らないところで邪悪な存在と戦っているとか、難解な事件を解決しているといったことがあるのかもしれませんが、我々には関係のないことです」
(152ページ)
 
 
 
彼女は俺たちと深く交わらないことで愉快な気分を感じていると言った。俺たちもそうなのだろう。鶴屋さんは今まで通りの鶴屋さんとして接しているほうがいいに違いない。彼女が何者で、何をしているかなんてたいしたことじゃなかった。ハルヒハルヒであるように、鶴屋さん鶴屋さんだ。いつも元気でにこやかで鋭い洞察力を持つ朝比奈さんの友達。SOS団の名誉顧問。そのあたりが一番おさまりがいいんだろうな。
しかし朝比奈さんとの出会いはどこまで偶然だったんだ。未来人にも読めない過去があったのか? ハルヒが何だか解らないものだったように
(153ページ)
 
 
 
次の祝日に俺たちは宝探しに行くらしい。明後日だ。鶴屋家の持ち山という話だったな。それにしても、またもや鶴屋さんの登場か。あの人は二人の朝比奈さんのことなんかおくびにも出さず、ハルヒと俺を前にしてもただ笑っているだけだろうが、このままでは俺が情緒不安定になりそうだ
(162ページ)
 
 
 
電話に出た使用人みたいな人は鶴屋さんから言い含められていたらしく、自己紹介などを省略して俺の名前を告げるだけで朝比奈さんへ取り次いでくれた。まったくこういうところも便利な鶴屋さんだ。打ち合わせを忘れていたのにこっちの思惑をすっきりと見通してくれている。将来は秘書にでもなればとてつもない有能さを存分に発揮するんじゃないか
(169ページ)
 
 
 
「やぁ! お帰りっ」
昨日と同じ和装の鶴屋さんがカサを片手に、元気に笑いながら門を開けてくれた。
「どこにお出かけだったんだい? いやっ、いいよっ。ワケありみたいだしさっ、あたしは言わざる聞かざる鶴にゃんだからねっ! 見るけどっ。あれあれ、みく――じゃない、みちる! なーんか汚れてるけどっ。すぐさまお風呂入るかい?」
機関銃のように喋る鶴屋さんは、
「寒かっただろう! ささ、お風呂お風呂! 一緒に入ろうっ。キョンくんもどうだっ。背中ぐらい流してあげるよっ。檜風呂!」
感涙してもいい申し出だが、本気でないのは彼女の顔を見れば解る。ハルヒは冗談のようで本気なことを言い、鶴屋さんは本気のような顔で冗談を言うのだ
(183ページ)
 
 
 
必要以上に関わらないようにしていると鶴屋さんは言い、古泉がなくてもよさそうな裏設定を教えてくれたりもした。だとしても――だとしたらだ、どうも彼女の行動は把握しにくい。草野球の助っ人や冬合宿のペンション提供はこっちから依頼したようなもんだが、わざわざ宝の地図なんていうエサをハルヒに与えるなんて、まるで俺たちと積極的な関わり合いを持とうとしているかのようだ。ひょっとして、ハルヒが希望しそうなアイテムを投げ込むだけ投げ込んで面白がっているだけなんだろうか。
俺の疑念を余所に、鶴屋さんはエビ煎にかじりつき、楽しそうな顔をひたすらしている。
そして、これまた不思議なことに古泉も似たような表情なのである。思えば鶴屋さんが何度も部室に出入りしていた過去の記憶をまさぐってみても、古泉が彼女に含みのある顔を見せたことはなかった。鶴屋さんには手を出すなってのが『機関』とかの上司から出た命令なんだとしたら、こんな身近にしょっちゅういるのはこいつとしては困りもんなんじゃねえのか。
それとも……。
俺は古泉の無害っぽい笑みに目をやって考えを巡らせた。こいつがあの夜に語った話がどこまで本当なのかは解らん。正しいのだとしたら『機関』と鶴屋家の間には不文律みたいな取り決めがある――と。しかしそれはあくまで『機関』と鶴屋家だ。古泉と鶴屋さんの間でのもんじゃない。この二人がそれぞれ二人とも、そんなん知ったことかと考えている可能性もある。それも互いに示し合わせたわけじゃなくてだ。
鶴屋さんは古泉や長門、朝比奈さんの正体について詳しく知っているわけではなさそうで、この三人――とハルヒ――が何か違うなと気づきつつ、詮索しようとしないのが鶴屋スタイルだ
(206ページ)
 
 
 
にしても鶴屋さんには感心させられる。ハルヒや朝比奈さんとの掛け合いを見ていると、自宅に朝比奈さんのそっくりさんか双子の妹かドッペルゲンガーがいるなんて素振りは一切見せず、本当にそのままの鶴屋さんだ。何と頼りになる先輩だろう
(211ページ)
 
 
 
ハルヒ長門も朝比奈さんも俺の予想を超えたことをやり出すようになりつつある。ああ、鶴屋さんもだな。どうも生命体として本質的に男は女に敵わないようになっているんじゃないだろうか
(264ページ)
 
 
 
「未来人か宇宙人だったら、どっちがいい?」
邪気のない上級生は、さらにこんなことまで言って俺を無言にさせた。
「そろそろ決めといたほうがいいかもにょろよっ!」
(405ページ)
 
 
朝比奈さんの生き別れの妹に貸したはずの服を、どうして朝比奈さん本人が着てこんな所にいるのかなんて、鶴屋さんにとってはどうでもいいことだろう。あんな説明に何の効能もないのは俺も彼女もよく解っている。それでも全く気にしないのが鶴屋さんの偉大なところだった。一生頭が上がりそうにないな
(420ページ)
 
 
 
ハルヒとハイタッチをかわすと、最初から最後までまったく目線を泳がすことなく立ち去った。朝比奈さんのことも昼休みのこともまるでなかったかのような日常ぶりだ。ありゃあ真似できそうにない。大物過ぎる。あのひとが居る限り鶴屋家は安泰だ
(422ページ)
 
 
 
 

 
涼宮ハルヒの分裂
 
 

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

 
 
 
そういや朝比奈さんと鶴屋さんもまたクラスメイトになったのかね? そうだったとしたら、そっちは鶴屋家が何かしてくれてそうだが、それもまたツッコムことではないさ
(14ページ)
 
 
 
いろいろ行ったぞ。アンティークショップ巡りやらフリーマーケットの下見やら、その帰り道に阪中家を訪問してルソーのご機嫌をうかがったり、それから鶴屋家の広大な庭で開催された大花見大会に招待されたり、ああ、あれは楽しかったな。鶴屋さんが指をパチンと鳴らしただけで母屋から山のような宴会料理が続々運び込まれてきた時にはたまげたが
(41ページ)
 
 
 
出演する必要もないのに、和服を着た鶴屋さんが日本家屋庭先の桜並木をバックに気前よく「のわっはっはっはっ」と笑い、なぜかついてきていた俺の妹とシャミセンが戯れているところに至っては単なるホームビデオレベルである。ことのついでとばかりに花見の時に意味なくカメラを回していただけだからな。バカ映画の風上にもおけないこの単なるゴミ映像集、見直すまでもなく確実に一作目より悪化している
(46ページ)
 
 
 
学食の拡張工事を無断で始めたりしたらちょっとした事件になる。さすがに文芸部の部費では建設事業までまかなえないぜ。
「する気になったら無断でやっちゃうわよ、そんなの。みんな喜んでくれるわ」
そうかもしれないがやめておけ。最悪、新聞記事になる。今度鶴屋さんに会ったら事前に根回ししておかねばならんな。ハルヒからスポンサー要請があっても許諾したりしないように。もっとも鶴屋さんクラスの偉大なる常識人になれば、ハルヒの提言をいちいち真に受けたりはしないだろうが、念のためだ
(106ページ)
 
 
 
鶴屋さんほど「さすが」という枕詞が似合うお人もいないだろうが、もしかして鶴屋家は飛鳥時代あたりから続く貴族の末裔なのか?
「そんな昔のことは知んないよっ。どうだっていいことっさ! 知りたくなったら家系図を見ればいいけど、探すのもメンドイからね!」
さばさばと言ってのける鶴屋さんがひたすら頼もしい。いつまでも朝比奈さんとペアを組んでて欲しいね。ハートとダイヤのクイーンでツーペアだ。鶴屋さんがそばにいる限り、朝比奈さんにちょっかいを出そうなどという不埒者は現れないだろうからな
(112ページ)
 
 
 
「じゃっ! またねっ。ありがとみくるっ。お茶おいしかったよ! 本年度もよろしくっ!」
かしましくそう告げて、部室を出て行った。恐ろしく足の速い小規模台風のような人だ。来たと思ったらいつの間にか遠くにいる……。
しかし、その場を明るくすることにかけては天才的だな鶴屋さん。というか何だったら苦手なんだ鶴屋さん。この世で最も泣き顔の想像つかない人だぜ。やっぱりかなわん
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キョン、いい? あんたも団員になって一年でしょ。団長の意向を読み取って、先に動くくらいのことちっとはしなさい。そんなのだからいつまでもヒラ団員なのよ。あたしの中での勤務評定表ではあんた、ぶっちぎりの最下位を驀進中なんだから」
ニッと不敵に笑ったハルヒは、一限目の現国で使うノートを広げ、シャーペンを振るって適当としか見えない手つきでフリーハンドの線をしゅしゅっと引いた。
「棒グラフにするとこんな感じ」
一番長い線に古泉くん、みくるちゃんと有希と脚注された線が同じくらい。で、俺はというお五ミリほどの功績しか団内では上げていないようだった。別に悲しくもないが
「それからコンピ研がこれくらいで、鶴屋さんがほら、もうこんなに。見なさい。あんた、部外者にまで負けてるわ。前の会誌の原稿もロクなもんじゃなかったしね」
団員その一にして最古参なのに情けない、とか思うところなんだろうかね。そりゃコンピ研は合計五台のパソコンを献上してくれたお人好しだし、鶴屋さんの上位に位置しようなんて干支が一回りしても無理だ
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拾ってみて再確認した事
 
 
キョンは朝比奈さんに対しては好意的だが、鶴屋さんに対しても好意的なイメージを持っているケースが多い
 
 
 
鶴屋さんはアニメ派がライブアライブでの
めがっさ」「にょろ」
をピックアップした事で、さもそれが象徴的な台詞であるかのように扱われている気がするが、実際にはそれらを使ったケースは極めて稀で、むしろ
「○○っ」
と、台詞の最後に「っ」を差し挟むケースが圧倒的に多い
 
 
 
鶴屋さんはネタキャラでは決してないのだが、雪山症候群、ないし陰謀まで進まないと鶴屋さんのキャラクターの奥深さが出ないため、現段階ではアニメ版だけ見てもそれらが全く伝わって来ない
 
 
 
だからと言って、ネタキャラだと認識されるのは、やはり納得がいかないので、さっさと陰謀を映像化していただきたい。
無論、それよりラグナロクが映像化されれば素晴らしいのは言うまでもない
 
 
とまあ、こんな感じで頑張ってみた。
誰が得するのか分からんが、これを読んだ人が鶴屋さんとはどういうキャラクターなのかを正しく認識してくれれば満足です