はやて×ブレード #31 「アイ・アム・バカ」

 
 
 
面白いなと思ってね。君の友人達。
他人の為にあんなにまで……少し羨ましいよ。
 
僕の周りにはああいった人間はいなかった
 
 
 
紗枝を乗せた車内で唐突に玲一はそう呟いた。
副管理人は
(何だ? 今さらいい人の一面でも見せるつもりか? ひつぎ会長派ではあるが玲一は嫌いなんだけど)
 
と思っていたら
 
笑わせてくれる仲間。滑稽で泥臭い。
あの匂いが移る前に連れ出せて本当に良かったよ。
紗枝さん。君は洗練されるべき女性なんだ

 
 
ああ、やっぱりこいつクズだったわ。
何だろうね、この端々から感じられる上から目線は。

 
 
紗枝「洗練って言うより選民ですね、それ」
玲一「それぞれの分に合った場所に在るべきだという話だよ」
 
 
おまけによくありがちな無自覚なタイプでなく、自分のそれが正しいと確信しているタイプだから余計に性質が悪い。
 
 

今回、
ひつぎ会長の義足が最新式でなく使い慣れた今までの物だった事。
ナギと一緒にいた新入生の名前が知花叶依(ちはなかない)である事。
さらに彼女の剣の師が黒鉄という姓だという事などが明らかになったが、
その全てがどうでもいいくらいに玲一に殺意が沸いた回だった。
 
 
 
――玲にはそれなりの人物を当てがって養子を跡目に据えるくらいはしているだろうが玲自身を認める事はまず無い

そして僕の立場も揺るがない。神門はあくまで同族主体だからね。将来の主権は僕にある
 
期待して期待して期待して切望した結果ではないだろうが、それが人生の領分というものだよ

 
可哀想に。でも君らの様な人間のために僕らが居る。
“持てる者”が“持たざる者”を幸せにしてあげるんだよ
 
 
この上から目線、読んでいて本当にイライラするね。
この手の敵対位置ないしキャラクターにとっての障害となるキャラクターの傲慢さは後々、その彼ないし彼女が追い詰められた時に爽快感を演出するための布石としては非常に重要なのだが、玲一の言動の腹立たしさはそれを見越しても不快感満載。
 
ちなみに、この間、紗枝に対する呼称が呼び捨てになってます。
しかも、意に染まぬ結婚を強いられる、と紗枝を表現しておりそれを理解していながらこれとはもうね……。
 
 
 
一方、玲は玲で父親から神門の後継にしてやっていいと告げられたものの、続けて発せられたのは学業に戻れとの通告。
 
一瞬、良かったな玲、などと思ったが、玲が紗枝を救ってやるには今すぐにでも当主の座(でいいのかな)に君臨する事が必要なわけで、結局、望みは叶わずじまい。
 
 

そして、二人の脳裏に浮かんだのは、はやての言葉だった。
 
なるよーにしかなんない。
 
そんな言葉が。
 
 
 
「でしょうね! わかりました」
 
玲は吹っ切れた顔でそう言った。
 
 
「その通りですね! ――でも」
 
紗枝は玲一の手を振り払いながらそう言った。
 
 
 
『もう結構』
 
 
もう結構だと。
二人はそう結論付けた。
 
 
 
 
ここで今月は終わったわけだが、二人がどうするのか全く分からない。
極端な話、紗枝が玲一との婚約を一方的に破棄してしまえば早いのだが、それが出来るなら紗枝はとっくにしていただろう。
 
紗枝の予定では玲の勝利で全て上手く納まっていたから自分が動かずとも良かっただけかも知れない。
妹と一緒に何らかの準備を水面下で進めていた可能性はある。
 
 
ただ、玲が天地の権利書を持ち帰った事で上手く収まり、玲一が
 
「バカな! こんな話、認められるものか!!」
 
などとうろたえる姿がすぐ見れるというわけではなかったので今後は気になる。
 
 
ただ、当初の目標だった天地の権利書取得をもっても紗枝の窮状をどうにかできなかった以上、新たな動きに入るのは予想できる。
それがどういった方向なのか。
 
来月も要注目