ドリフターズ 第一巻を読んでみた


ヘルシングの作者、平野耕太先生ことヒラコーの新作であるドリフターズの単行本第一巻が発売されたので買って来ました。
 
 


 
ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

    





舞台となるのは1600年。
天下分け目の戦である関ヶ原の戦いの真っ最中から物語が始まるわけだが、ぶっちゃけ戦国時代は最初の1話だけで、2話からは主人公が飛ばされた異世界での話が展開される。





今作の主人公は、豊久という島津家の戦国武将。





前作ヘルシングの主人公アーカードは極めて不死性の高い吸血鬼だったが、今回は戦国武将とは言え、ただの人間。




多少、違った雰囲気になるのかと思いきや、豊久は本編開始早々に味方を逃がすために徳川軍の有力武将の一派と対峙。
何本もの槍に貫かれながら火縄銃をぶっ放している。


槍に貫かれまくった時点で即死じゃないのかとか言ってはいけない






ヘルシングもそうだが、この作者は



死を覚悟した漢が嬉々として死地へと突撃する様を描くのが上手い。


瀕死のキャラが活き活きと殺しあう姿を描くのも上手い。




戦国時代でありながら現代ファンタジーだったヘルシングに似た空気を感じさせる作品に仕上がっているのはこの部分による所が大きいのかもしれない。







序盤で豊久に撃たれた相手の武将だが、部下に助けられ戦場を離脱。
首を置いていけと全身から血を流して叫びながらこれを追う豊久がふと気付いた時、目に入ったのは白い廊下と無数の扉。




その中の一つを抜け、異世界に辿り着いた豊久はその先で18年前に死んだはずの織田信長と400年以上も前の年代の人物である那須与一と出会う。



信長は髭面のおっさんなのだが、与一は女と見間違えるほどの美貌。
何故、男なんだ……。







他にも豊久とは関係ない所でローマ時代の人物であるスキピオハンニバルが出ていたりするのだが、割愛。









流れ着いた異世界の種族であるエルフの村が襲撃され、豊久は先刻まで死にかけていたとは思えない勢いで駆け出していく。



エルフを追跡する騎兵を豊久が



「何言ってんのかさっぱりわがらねぇ。日本語しゃべれよう。日本語しゃべれねぇんなら死ねよ」



と容赦なく切り捨てる部分や



「ここがどこでどうなっているか何も知らん。これが夢か現実か何もわからん!! だったら俺は突っ走る事しか知らん」




という台詞。





エルフの村を襲撃する騎士達のリーダーを痛めつけて動けなくした状態で、仲間を殺されたエルフ達に刀を差し出し



「ここがどこでお前らが誰であろうと仇はお前らが討たねばならぬ」



と宣言する部分など、要所要所に平野耕太テイストとも言うべき部分がある。




人がゴミのように死んでいく所も相変わらずだ。








豊久達のような異世界に流れ着いた者達を「漂流物(ドリフターズ)」と呼ぶらしいが、同じように異世界に流れ着きながら「漂流物(漂流者と表記される場合もある)」に敵対する存在である「廃棄物」。


彼らを率いる黒王なる人物の軍団に砦が崩壊させられるシーンでは異能力と凄まじい戦闘能力を有した様々なキャラクターが登場している。




黒王の正体こそ不明だが、「廃棄物」には土方歳三ジャンヌダルクアナスタシア・ニコラエヴァ・ロマノヴァなど、歴史上の人物の姿が見受けられる。





「漂流物」も「廃棄物」も共に現実世界から異世界へ流れ着いたという点は同じでありながら、「廃棄物」だけが特殊能力を使える(少なくとも現時点ではそう見える)理由は定かではないが、火刑に処されたジャンヌが炎を操り、ロシア出身のアナスタシアが相手を凍結させる能力を有している点で、現実世界での生き様に関係した能力が使えるようだ。







豊久、信長、与一ら「漂流物」が死ぬ前に送られたのに対し、ジャンヌダルクは処刑された、つまり死んでいるわけだから、ひょっとしたら死後に異世界に到達したら「廃棄物」という事なのだろうか?







敵キャラがチートじみた強さで勝てる気がしない所もヘルシングと同様である。


もっとも、ヘルシングは主人公のアーカードが一番、チートだったわけだが……。












さて、この作者、ギャグシーンは独特のデフォルメ具合で秀逸なのだが、第一巻で一番、笑ったのは作者欄だった。





平野耕太という漫画家は毎回



趣味:嫌がらせ、ちんこいじり



などと平然と書いているのが作者欄のテンプレになっているのだが、その下の項目が毎回、違う。







ヘルシング一巻
 


  
HELLSING 1 (ヤングキングコミックス)

HELLSING 1 (ヤングキングコミックス)

 
    
  
 
 好きな国:ドイツ(ナチだから)
好きな声優:野沢那智(ナチだから)





ヘルシング7巻
 


  
HELLSING 7 (ヤングキングコミックス)

HELLSING 7 (ヤングキングコミックス)

    
 
 
 好きなメイドNo.3:シャーリー
好きなメイドNo.2:エマ





ヘルシング9巻
 


 
HELLSING 9 (ヤングキングコミックス)

HELLSING 9 (ヤングキングコミックス)

    
 
 
好きな脱獄犯:T−バッグ





ヘルシング最終巻
 


 
HELLSING 10 (ヤングキングコミックス)

HELLSING 10 (ヤングキングコミックス)

    
 
 
 Q:結局、平野綾と結婚する方法って見つかった?

A:根気良く諸外国に向かって歴史的に見て固有の我が嫁って外交努力を粛々と続ける






と書いている。
ようするに、作者の自由裁量の部分なのだが、ドリフターズでは




好きな戦国大名:島津家




と書いてあったのは良かったのだが





 Q:戦国ランスで娘武将どんどん島津に寝取られて、ねえどんな気持ちだった?

A:九州ごと滅べと思った



と書いてあったのがツボだった。




アリスソフト凄いな、などと思ったのはさておくが、このドリフターズという作品。


まだまだ一巻ではあるが、ヘルシングの雰囲気を引き継いでいるため、平野耕太テイストの好きな人は安心して読める作品になっているのでヘルシングファンには是非ともオススメしたい作品である。





機会があれば読んでみるのもいいだろう